エピソード
フィールドワークの先駆者
金田一がアイヌ語の研究を始めた頃は、言語学の聞き取り調査では最も重要な言葉の一つである「これは何?」ですら何と言うのかよく分らない有様だった。
そこで金田一は思案の末、訳の分からない絵を描いた紙をアイヌ人に見せ、その反応から「何?」という言葉を聞き出すことに成功。
ここから膨大なアイヌ語の単語を一つひとつ聞き取り調査で記録するという地道な事業がスタートした。
「何?」という言葉を聞き出すことは、この調査において非常に重要である。文字をもたず口述でしか伝えられていない文化を、聞き取り調査で少しずつ記録するための第一歩だ。
非常にまじめな性格
講演がうまく、啄木との思い出やアイヌ集落探訪の話をすれば、実に巧みに聴衆を惹きつけることができた。
しかし、そんな金田一が「今日ぐらい話をするのが苦しかったことはない」と壇上から降りて話したことがある。ただ「挨拶」としか書かれていなかったときだ。
何を話せばよいのか分からなくなり、しどろもどろになってしまった。
まじめな金田一らしいエピソードである。この几帳面さ、慎重さがあって未知の文化の研究をやり遂げられたのではないだろうか。
