金田一京助がわかる名言
誰が言い出したも分からない、ほんの一寸した切っ掛けで口に登ったのが、いつのまにか擴がって深く根を張っていたり、そうかと思えば、あゝでもない、こうでも無いと、散々考え抜いた挙句の名案も、往々附いてくるものが無くつて、そのままになってしまう氣まぐれ者は『言葉』である。
金田一京助『片言隻語』
言葉こそ固く鎖した、心の城府へ通う唯一の小径であった
金田一京助『心の小径』
滅びゆくアイヌというと、(中略)死滅する運命にでもあるもののように連想される弊がある。いう人は、同情をもって、かつ感傷的に詠嘆的に、美的に優婉に表現している気でしょうけれど、いわれる人だちにとっては、死の宣告のように無惨にひゞくのです。すなわちそのたびごとに、暗い運命に吐胸を突かれて憂鬱になるのであります。しかしながら、大和民族古来の対アイヌ政策は決してそういう絶滅を期したのでも、実行したのでもありませんでした。これは植民史上いさゝか世界に誇りうる成功です。血をもって血と合して来たもっとも人道的な解決方法だったから(中略)もっとも長い間には、全くよいことぱかりではなく、いつの世、どこの世界にも、乱暴者もいれぱ、悪人もいる。すまないことであるが、アイヌの人に対しても、ずいぶん、無法な狼籍、不埒な乱暴を働いては、さんざんいじめぬく悪党もなくはなかった。
アイヌ民族は(中略)北日本の若い国民の血潮の中にとけこんで新日本の運命を背負って立とうとしているのであります。こうして太古以来、たいせつな日本民族の構成要素として融合したアイヌ(中略)……ですから、私どもの願いますことは、滅びゆくというような余計な刺激的な語は避け、いたずらに感情をそゝらないよう。そうでなくてさえ人種的感情というものは非常にデリケイトなもので、こちらで何とも思わずに使ってる語が、案外にちくりちくり心をさいなんでいる………
あいぬの話
